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ヴィラン


「ヴィラン」という歌を歌いました。


ずっとこの歌を歌いたかったので、やっと歌えて、しかも信頼しているMIX師さんに素敵に仕上げていただけて感無量です。

コーラスを入れてもらいました!

合作です。本当に嬉しい。


なぜこの曲を歌いたかったのかというお話をします。


僕はトランスジェンダーです。

小学生、自分の服を選べるようになった頃から男の子の格好で生きてきました。

なぜなら、それが自分にとっての当たり前だったから。


しかし、女性ホルモンには抗えませんでした。

胸が発育してきた頃、気持ち悪くて、誰にも自分を見られたくなくて、

胸が目立たないように常に前かがみの猫背で過ごしていました。


下校途中、知らないおじさんに「胸張って歩け!」と叱られたこともあります。

ずっと、大人になって初めて胸つぶしというものを買うまで胸を隠すように過ごしていたので、今でも肩が変形したままです。


性同一性障害の診断済みです。

今は「性別違和」という呼び方に変わりましたが、当時は「障害」でした。

今みたいにカミングアウトする人は多くなかったです。


数年、髪を伸ばして女性の格好をして暮らしてみたこともあります。

本当に自分が「そう」なのか、診断を受けてもなお、確信が持てなかったためです。


コスプレで「自分が魅力的だと思う女性」の姿をすることは好きでしたが、

素のままの自分がもし、「女性」だったら。

確かめる必要があると感じました。


しかし、世間に女性として扱われ、男性に声をかけられ、

大きい荷物を持たれ、ドアを開けてもらう。

連絡先を聞かれる、好意を持たれる。

居酒屋で知らない男性から奢られる。


いいなぁ、得だなぁ、自慢かよ~、と思うかもしれません。

僕は とても 気持ち悪かった。


優しさが気持ち悪いのではなく、

「女性」として自分を見られる違和感に耐えることができなかった。

結果として、欝を発症。

通院し、伸びた髪を切りました。


確信を持てたので、今はホルモン治療を継続しています。

そのせいか、内蔵と血液があまり良くないらしいです。

不自然なことをしているので、どうしたって体にダメージがあります。

それでも、幼い頃から抱えていた苦しさから少しでも楽になりたかったのです。


トランスジェンダーに対して、「性適合手術を受けろ!」という声があります。

「よくわからない存在」が「自分たちを性的な目で見ている」

という気持ちがあるのでしょう。

現に、本当の当事者じゃない人がトランスジェンダーをうたって

公共の浴場に入ることもあるらしいですね。


僕は男湯にも女湯にも入りたくありません。

プールにもいかない。温泉は、客室に風呂がある宿を選びます。

なぜなら、不完全な自分がどちらの性の場に踏み入れても、

困惑と恐怖を抱かれるとわかっているからです。


だから、「性適合手術を受けろ」と言うのでしょう。


しかし恐らく、リスクを知っている人は少ないです。

生殖機能を完全に取り去ると、性ホルモンの分泌がなくなります。

そうすると、骨や臓器にガタが来ます。

生涯、ホルモンを外から入れてやる必要が出てくるのです。


「それなら入れればいいじゃないか」と言われるかもしれません。

僕も出来ればそうしたかった。


けれど、この国は地震大国です。

僕の地元は東日本大震災の被災地です。

あの時の混乱と物資の不足は長く続きました。


この先、大きな災害が起きた際、医療は僕たちではなく、

重症を負った人を優先すべきでしょう。

それに、物資の流通が滞ったら?

避難先で「ホルモン治療をお願いします」というのはできるのか?

できないのではないかと思います。


万が一のために、塗り薬タイプのホルモン剤を個人輸入してストックしています。

効きはとても弱く、声が高く戻ってしまいそうになりますが。

もし、このストックが無くなってしまっても、

生殖器が残っていれば身体に深刻なガタがくることはないはずです。

本来の性ホルモンが仕事をしてくれるので。


生殖器が残っていれば、です。


それだけのリスクがあるのです。

手術が高額だというだけではありません。

でも、災害やインフラの心配をしなくていいのなら手術を受けたかった。


胸だけは手術で取る予定でいます。

これは取ってしまっても大丈夫なので。

ただ、保険適用できる病院が遠方にしかないのですが、

それでも手術費は高額です。

頑張って貯金します。


僕は活動するうえで便宜上、「中性」というカテゴリでいますが、

それは僕がホルモン治療をしても声変わりが止まってしまったこと。

ホルモン剤を増やしたら臓器にダメージが出てしまったため、

これ以上声を低くできないこと。


それゆえに、仕方なく「中性」と名乗っています。

なかなか難しいですね。


ただ、僕は僕であることに変わりはないので

別にいいか、と割り切りました。


さて。


トランスジェンダーというもの。

自分にとってはアイデンティティではなく、一生の枷だと思っています。


どう足掻いてもどこまでも不完全で、歪で、

偏見から逃れられず、

「理解あるよ」という言葉に安心すれば、いつの間にかヴィランに仕立てあげられる。

男性にも女性にも、困惑される。


根も葉もない噂をたてられ、孤立する。


そういう生き方から逃れられないから、僕はあまりリアルの人と親密になりません。


人にやさしくありたいです。

しかし、そのようにすると恋愛的な好意、下心があると勘違いされます。

勝手な思い込みで、拒絶されます。

性獣だとでも思われているんでしょうか。


僕はただの 人間 です。


ただ、誰にでも親密な ふり だけはできるようになりました。

常に線をひく。

ヴィランにならないように。

自分が傷つきたくないというのも大いにあります。


幸い、恋愛に関して僕は欲がありません。

もうこれまでの人生でじゅうぶん楽しみました。

子を成せる訳でもないですし、

漫画家という不安定な仕事をしているので、もうあとは独り身で良いと思っています。


原稿料を貯めて一軒家も買いましたし、

余生は人となるべく関わらないようにして、

動植物と共にひっそり生きていきます。


まるで山奥で隠れて暮らすモンスターみたいですね。


やっぱり僕は「ヴィラン」です。



良い夜を。

 
 

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